少しずつ育てていく庭・その2
長野県駒ヶ根市の静かな住宅地。周辺には比較的新しい住宅が建ち並んでいます。それぞれの住宅はかなり大きめの区画で、それに伴って庭部分の面積も大きくなっています。
大きな庭を一度に作り上げることは、費用や時間的な面で難しい事が多いため、段階的に一歩一歩作り上げていく方法で庭づくりをします。結果的に、少しずつ庭が広がっていく様子を楽しむ事が出来て、庭に対する愛着が深まることにつながります。
数年前に主庭やアプローチの庭を作って以来、庭木の補植や部分的な改良を重ねて来ましたが、今回は木製フェンスの延長と鉄筋コンクリート製の擁壁(ようへき)を築造して庭のエリアを拡大することになりました。
1.必要に応じて伸ばす木製フェンス
敷地面積が大きい場合、敷地全体を囲うフェンスも相当な長さとなり、コストも大きくなります。それならば、まず必要最低限のフェンスを設置し、あとは必要に応じて徐々に伸ばしていけば良いのではないでしょうか。
とても単純なことですが、段階的に施工するという方法については、コスト増を心配したり、そもそもフェンスの延長が出来ないと思っている方が多いようです。
アトリエタムロで施工する木製フェンスは、将来的な延長やメンテナンスの事を考えて、主な部材を取り外すことが簡単に出来るようになっています。これによって、既に設置されているフェンスを無駄にしたり、傷つけたりする事なく、フェンスの延長が可能です。
2.庭エリアを拡大する土留め工事
主庭のある南側については隣地との高低差がありませんが、東側については隣地より約80cm高い位置にあり、高低差を自然な法面(のりめん)で処理していました。敷地に余裕がある場合は法面でも良いのですが、安全性や雑草対策、隣地への土砂流出などの問題があります。
隣地境界に擁壁を設置することで、デッドスペースになっていた部分を庭として活用出来る事もあり、今回のメニューに擁壁の設置工事も加わりました。
土留め工事(擁壁工事)にも様々な種類があり、高さや立地環境、目的やコスト等を考慮して選択します。主に住宅の庭で採用される代表的な方式を以下に示します。
①コンクリート製擁壁
小規模な土留めから大規模土木工事まで幅広く採用されているコンクリート製擁壁ですが、現場で型枠を組み、コンクリートを流し込む現場打ちと、予め工場で製作された擁壁を現場で設置するPC擁壁などに大きく分けられます。
今回の現場では現場打ちの重量式擁壁という方式を採用しました。地盤の強度や施工期間、現場の広さと資材搬入経路、もちろんコストについても検討した結果、最も条件に合う方式として選択しました。
②石積み
自然石を積み上げてつくる土留めは、自然な雰囲気の庭にぴったりな方式です。コンクリート製の擁壁と比べて自由度が大きく、曲線的な形状や勾配・高さなどの変化にも柔軟に対応出来ます。
植物との相性も良く、石の間に草花を植栽したり、目地を緑化する事も可能です。石の種類によって全く表情が異なるため、庭全体のイメージを把握した上で石を選ぶ事が大切です。
手間は掛かりますが、自然な風景を作りたい場合には最も適した方式だと思います。
③木製土留め
素材の持つ温かみが特徴的な木製の土留めは、例えば、古枕木や古電柱などを使い、新しさよりも時間の経過した雰囲気を表現することがあります。また、等間隔に打ち込んだ木杭に板や丸太を横向きに固定して土留めにする事もあります。石積みと同様、植物との相性がよく、自然な雰囲気の庭にぴったりです。ただし、木の特性上、施工方法や事前の防虫防腐処理、材料の種類によって、寿命が大きく異なります。
④自然な法面
擁壁や土留め使わずに、高低差を斜面で処理する法面は、道路際や線路際、畑や田んぼの周りなど、身の回りでもよく目にします。
あえて法面を作ろうと意識していなくても、地面が平らでない部分には法面が存在しています。最も低コストで可能な高低差処理方法で、最も自然な風景に溶け込む方法でもあります。
宿根草や低木などを植えて立体的な植栽帯をつくる事で、法面の崩壊を防止する事が出来ます。
また、石積みなどと組み合わせる事で、変化のある風景を作ることも出来ます。
3.主庭の雑草対策
主庭の地面は舗装や防草処理を行っておらず、クローバーなどの草花が自然に発生して緑化されていたものの、夏場は見栄えの悪い雑草が大きく成長し、その対応に追われていました。
今回は耐久性の非常に高い防草シートを全面に敷き、その上には長野県産のヒノキチップを敷き詰めて、防草対策を施しました。
防草シートを敷くに当たり、庭全体のレベル差を測定し、重機によって再度整地を行いました。防草シートを敷く際に、凹凸がない状態をつくることが重要です。