高低差のある庭をつなぐウッドデッキ桟橋

高低差のある庭をつなぐウッドデッキ桟橋
周辺にはリンゴ畑や水田が広がる静かな環境。平屋建ての住宅は地元の木を使った心地の良さそうな建物です。敷地は建物が建っている上段エリアと、元々水田があった下段エリアに分かれていて、両者には1m以上の高低差があります。
この高低差をどうするか、また2つのエリアをどう繋ぐかが大きなテーマになりました。

また、通路や駐車スペースなどの地面がかなりの面積になるため、仕上げや防草処理の方法などは、コストと使い勝手の両面に主眼をおいて検討していきました。

1.回遊性の高い庭をつくる

敷地全体の面積が一般的な住宅と比べてかなり大きいため、「広大な広場を持つ庭」なども実現可能なのですが、あえて大きなオープンスペースは確保しませんでした。それよりも、庭の中を歩き回り、場所ごとに様々な景色が展開するような回遊性の高いデザインを心掛けました。

全体計画スケッチ
建物から伸びる桟橋状のウッドデッキが庭のシンボルになっています。

また、庭を歩きながらいつも新しい発見を得る事が出来るように、通路の配置や通路と植栽の関係を考慮し、基本的には外部に対してオープンでありながら見られ過ぎない仕掛けを施しています。

2.ウッドデッキで高低差のある庭をつなぐ

リビングから外に出ると、細長くて港の桟橋のようなウッドデッキが下段の庭に向かって伸びています。桟橋状デッキの先端にはベンチのある少し広いスペースがあり、さらにそこから階段を下ると下段の庭に進むことが出来ます。

桟橋状ウッドデッキ
木々の中を歩けるウッドデッキのイメージスケッチです。

桟橋状デッキの両側には高木が植えられ、樹木が成長する数年後には林の中を歩いているような感覚になるはずです。

また、庭の高低差を吸収するためには、擁壁や石垣などを構築して上段と下段を区切る方法が一般的ですが、ここでは自然な法面や階段状の土留めなどを用いて、違和感なく庭に溶け込むようなデザインとしています。

施工前の高低差
上下二段の庭にはもともと水田と畑がありました。
施工前の法面
施工前には直線的な法面によって上下のスペースが区切られていました。
着工時の造成作業
図面を元に敷地へ実寸の線を引き、この線に沿って重機で掘削していきます。
造成作業完了
庭の骨格となる通路や島状の植栽帯などを作ります。
桟橋状ウッドデッキ
建物から直接伸びた、まるで港の桟橋のようなウッドデッキです。

3.通路のつくり方

庭の中の通路、今回の庭では通路のつくり方が大きなポイントになります。通路が占める面積が大きいので、舗装材の色味や素材感が庭全体の雰囲気に大きく作用します。

また、舗装材の下地は水たまりが出来ないように適切な勾配を確保した上で平滑にならし、厚口で耐久性の高い防草シートを敷き詰めます。

通路の両側には自然石や地被類を使って法面を作り、通路と植栽エリアをやわらかく仕切ります。

通路の線形は基本的に自然な曲線として、通路幅も一定にせず、全体的にラフでやわらかいイメージを大切にしています。

雑木による木立
徐々に成長する木々が庭を覆い、将来的には大きな天蓋が出来上がります。
デッキの下の空間
ウッドデッキの下のデッドスペースには敷石の歩廊と日陰の植物を配置しました。

4.雑木林を感じる植栽計画

それぞれの植栽スペースは大小の起伏がある こんもりとした島状の形態をしており、地被類と宿根草、低木から高木を植え込んでいます。
まさに島のようなイメージです。

ブドウのフェンス
木フェンスとデザインを合わせたブドウ垣根仕立て用の支柱。

道路と敷地の境界に庭木を列植するような手法は取らずに、どこから庭を見ても同じような風景がないような、そんなイメージでデザインしています。

これにより、風景の多様性を生み出され、遠近感が強調された奥行きのある庭を実現しています。

また、桟橋状ウッドデッキの延長線上にはバラの回廊を配置、ここは曲線基調の全体イメージとは対象的な、直線的で規則的なデザインとしました。

バラの回廊
曲線基調の島状植栽帯に対して、直線的なバラの回廊がアクセントになります。
木フェンス越しの庭
木フェンスの高さ、板の間隔を検討し、隠したいところと垣間見せるところを区別しました。