懐かしさと心地よさを感じる庭
海のイメージが強い葉山ですが、ここは周囲を小高い山に囲まれた静かな住宅地。その一角に杉材を使い、大らかな空間をもった家を計画しました。
造園計画は建物の設計時からイメージを重ねてきました。「田舎の庭」をコンセプトとした庭には、大きな家庭菜園が作られ、どこか懐かしい雰囲気を感じる事が出来ます。
1. 裸足が似合う家
玄関は広い土間になっていて、床は無垢の杉板が張られています。靴下を脱いで裸足になった方が気持ち良い。一言で言うとそういう家です。
高い天井にも、柱や梁にも、きれいな木目の杉材が使われていて、室内に入ると杉の香りがほのかに香ります。
家全体がひとつのボリュームになっていて、家族の気配をどこにいても感じることが出来る、そういうイメージをいつも頭の中に置きながら設計しました。
ご家族全員が真剣に設計作業に関わりながら、まさに私と共同作業で作り上げていった、思い入れたっぷりの家です。
いつも、この建物を見ると、何だかホッとするというか、温かみを感じるというか、とてもいい気分になります。
2. 日本の田舎の庭
今でこそ、地方の農村で暮らしているので、「田舎の庭」というものが、かなりリアルに想像出来るのですが、当時はまだイメージ優先だったかも知れません。
それでも「田舎の庭」をキーワードとして、出来るだけ装飾のない、いつでも土に触れられる、決して現代的ではない、そんな庭になりました。
奥様からは庭全体に黒土を入れて、庭中どこでもダイコンやニンジンが育つ庭、をリクエストされましたが、さすがにそこは思い留まって頂きました。雨でも降ったら玄関にたどり着けなくなってしまいますので。
3. 素朴な素材を使って
コンクリートは自然素材とは言いませんが、コンクリート製品が経年変化するとなかなか味わい深い風合いになります。ここでは、敷石の代わりにコンクリート平板を使っています。コンクリート平板の表面にスジを入れて滑り止めとしていますが、時間が経つと洗い出し仕上げのような状態に変化します。
また、家庭菜園と道路を仕切る木製フェンスは、杉材を使っています。木製フェンスの材料としては、レッドシダー材を使うことがほとんどですが、ここではあえて杉材を選択しました。建物とフェンスの見え方を考えると、杉材も悪くないな、って思っています。
4. DIYの可能性を考える
庭の手入れも庭づくりも、休みの日に家族みんなで作業出来たら、素敵な事だと思いますが、全てを自分たちでやることは困難です。ただ、どこか一部分でもDIYで出来れば庭に対する想いも深まるものです。
ここでもDIYで出来るところはお願いしています。きっと少しずつ、家族の力で、庭や畑が成長していくのだと思います。薪ストーブのための薪小屋が作られ、庭木が植えられ、そのうちに田んぼが出来ちゃうかも知れません。
造園屋としては、そのお手伝いが出来ればとてもありがたい事です。