2通りのウッドデッキの材料、どっちがいいのか
- 2018.08.02
- 木工事
- ウッドデッキ, ガーデンファニチャー, 素材
では、なぜ2通りだけなのか。
1.ソフトウッドは耐久性に問題ありか
このあと出てくるハードウッド、という名称が一般的になっているので、あえてソフトウッドと言ってみましたが、私はソフトウッドという呼び方はほとんどしません。「ソフト」という言葉から、何となく弱そうだったり、簡単に腐りそうなイメージをユーザーに植え付けてしまいそうだからです。
個人的には、「ソフト」で比較的軽い材料だからこそ得られるメリットがあると考えています。
一例を挙げると、素材感の良さ。
ウッドデッキを素足で使うか、土足で使うか。ソフトウッドは日本的に素足で使うウッドデッキや濡れ縁などに最も適していると思います。これは実物を比べてみるのが一番。踏んだ時の感触、音、温度。こんなにも違うものかと実感してみてください。
もちろん、長所もあれば短所もあるもの。ソフトウッドの代表的な樹種を挙げて、その特徴をご紹介します。
①ヒノキ
日本産のデッキ材料といえば、まずはヒノキを思い浮かべるのではないでしょうか。そして、ヒノキといえば、何となく高級なイメージを持っている方が多いです。「総檜造りの家」なんて聞くと、ものすごいお屋敷を想像したりして。
実際には、ヒノキは杉やカラマツと並んで国産材の代表格で、価格もピンきり。ウッドデッキとして使うのは、節や多少の欠点がある普及価格帯の材料で十分です。
アトリエタムロでは、ウッドデッキの束柱や木フェンスの柱、濡れ縁などでヒノキを使うことがあります。また、コストダウンを図るときにも、ヒノキ材を使うことがあります。弊社は、現在長野県をホームにしているので、長野県や隣接する岐阜県のヒノキを比較的安い価格で使うことが出来ます。
ヒノキは昔から浴槽や桶に使われていたように、水に対して強い材料と言われてきました。しかし、使い方や保管方法、環境によっては割と早く腐ります。ウッドデッキに使うときも、各部の納まりや塗装などによって腐りにくくする工夫が必須です。
②ウエスタンレッドシダー
北米産のレッドシダー材、日本名が米杉なのですが「杉」の仲間ではなく、「ヒノキ科」の樹木です。と、紹介される事が多いのですが、混乱を招くので「米杉」という通称は使用しないようにすれば良いといつも思います。
レッドシダーの特徴は、耐久性の高さ、良い香り、加工性の良さ。ウッドデッキには最適な材料だと思います。
アトリエタムロでは、レッドシダー材に防虫防腐塗料を2回または3回塗装して使用します。ご希望によって無塗装で使う事もありますが、基本は塗装によって耐久性や防虫効果を高めて使っています。
レッドシダーの最大の弱点は、昨今の価格高騰と供給不足だと思います。アメリカ国内の需要増やカナダの自然災害、政治的な介入等もあってここ数年は特に顕著です。
それでもトータル的なバランスに優れた素材なので、今後も継続的に使っていく材料だと考えています。
③その他のソフトウッド
国産で言えば杉やマツ、外国産ではホームセンターで大量に売られているSPF材やレッドパインを加工して耐久性を高めたサーモウッドなどがあります。
この中で、サーモウッドは耐久性を高めた代わりに価格が上がる傾向にあり、SPF材はそもそも屋外での使用に向いていません。
国産の杉材はヒノキと同様に塗装や注入によって屋外での使用も可能になりますが、ヒノキよりも傷が付きやすく、あえて杉を使う理由がない場合は選ぶことがありません。
2.ハードウッドは高価な材料か
ソフトウッドと比較して、明らかに硬く、重い木材であるハードウッド。数多い種類がありますが、一般的にウッドデッキなどに用いられるのは数種類。その中でもウリン材やイペ材などは公共空間のボードウォークや公園のウッドデッキなどに使われ、十年以上ノーメンテナンスでの使用が可能とされています。
材料の特性としては、無塗装の材料でも屋外使用が可能で、その硬さ故に傷などが付きにくく、経年劣化もしにくいのが大きなメリット。
「ハード」であることでメリットがある一方で、当然デメリットもあります。
この硬さと重さは施工性の悪さや運搬コストの増加をもたらします。また、素足で触れた時の木材ならではの「やわらかさ」は皆無で、どちらかと言えば金属や石材に近い感じがします。そのため、蓄熱性が高く、冬の低温時や真夏の高温時には素肌で触れたくなくなるかも知れません。
単純な材料価格は、前述のウエスタンレッドシダーと比較してほとんどの場合、高くなります。また、送料などの運搬コストも、重量が増加するにつれて一般的には高くなります。(チャーター便など、例外もあり)
しかし、塗装費用の有無やメンテナンスの費用など、トータルで計算すると、あまり大きな差が無いケースも結構あります。
ソフトウッドとハードウッドで迷ったら、コストよりも、使いみちや使用頻度、そしてどんな素材感が好みかを考慮して選ぶべきだと思います。
①ウリン(ビリアン)
インドネシアやマレーシアが原産のウリン(ビリアン)。まさにハードウッドの代表として多くの公共空間で使用されています。公共空間、いわゆる不特定多数の人が使う場所で使われるという事が、その耐久性の高さを示しているのだと思います。
色はもともと赤っぽい茶色が特徴的な木材ですが、次第に色が抜けて、灰褐色に変化していきます。なお、施工してしばらくの間は、雨が降る度に赤黒い灰汁を染み出し、基礎のコンクリートなどを汚してしまいます。
価格はハードウッドの中でも高い部類に入り、供給量はやや不安定です。
②イペ
主にブラジル原産のイペ。デッキ材として最も実績のある材料です。ウリンと同様、公共空間での実績が多く、耐久性も非常に高い理想的なデッキ材です。
色はウリンの赤みがかった茶色と比べ、イペは黄色みが強くなります。
一本ごとの色や木目の違いが大きく、見た目を揃えるのが困難です。
価格はハードウッドの中でも高い部類に入り、供給量は伐採規制の強化などもあって不安定です。
③セランガンバツ
ウリンと同じく、インドネシアやマレーシア原産のセランガンバツ。少し長い名前と特徴の薄い見た目からか、ややマイナーな印象のあったハードウッドです。しかし、価格が他のハードウッドと比較して安い事や、十分な供給量があることで、近年ではよく見かけるようになりました。
アトリエタムロでは以前よりセランガンバツを採用しており、経年劣化の様子などを確認してみても、デッキ材としての性能が良い材であると考えています。
色はイペなどに近い黄色みがかった茶色。月日とともに灰褐色に変化します
無塗装で使うことが前提ですが、数年後に茶色みが退色した頃に塗装をする事も可能です。
なお、ウリンやイペと同様、セランガンバツ材は雨が降ると灰汁が染み出してきます。これは、数回から十回程度の雨で治まるのですが、基礎のコンクリートや建物の外壁を茶色く汚してしまいます。洗剤や薬品で落とすことも可能ですが、時間の経過とともに気にならないレベルになります。
④その他のハードウッド
ウリンやイペに代わる材料として近年使われているイタウバや、赤褐色が特徴的なマニルカラ、ハードウッドとしては珍しい針葉樹であるサイプレスなど、それぞれ特徴的な材があります。
全てが外国産材で、昨今の環境問題や輸出規制などによって価格の変動や供給量の減少もあり、実際に発注をする段階にならないと手に入るかどうか分からない、なんてことも珍しくありません。
3.究極の2択をする
そもそも2通りのウッドデッキ材料ということでしたので、最終的に2つに絞ってみます。広い意味での2通り、という意味では「ソフトウッド」か「ハードウッド」になるのですが、材種を限定すると「ウエスタンレッドシダー」か「セランガンバツ」の2択になると思います。
少なくともアトリエタムロではというだけで、それ以外が劣っているということでは全くありません。
ただ、これまでの施工実績やコストと性質、素材感、などなどを考慮すると、ソフトウッドでは「ウエスタンレッドシダー」以外に有力なモノがなく、場所や事情によっては「ヒノキ」を使うこともあるという感じです。
価格が高騰し、供給量も不安定になっていますが、今しばらくは使い続ける事が出来そうです。
一方、ハードウッドでは、「ウリン」や「イペ」と比べてやや印象の薄い「セランガンバツ」ですが、供給量、コスト共に大きな欠点がなく、家庭のウッドデッキとして使うには必要十分な、最も向いている材料だと思っています。
今後の状況次第では、入手困難になることも全くない訳ではありませんが、今の所安定して手に入れることの出来るハードウッドです。
では、この2通りで選択に迷ったらどうするか。先にも触れたように、「どこでどんな風に使うか」「誰がどの程度の頻度で使うか」「見た目や質感はどちらが好みか」これらを考えれば答えが出てきます。
一例として、「玄関前のポーチとして土足で使う」「家族以外にも割と多くの人が使う」といった場合は、「セランガンバツ」が適しており、「室内から素足で出ていくウッドデッキとして使う」「座ってお茶を飲んだり、日光浴に使いたい」となれば、「ウエスタンレッドシダー」が適しているのではないかと考えます。
「ソフトウッド」だから長持ちしない、とか、「ハードウッド」は高すぎて使えない、といったような一方的なイメージは除外したほうが良いような気がします。