広大な自然に囲まれた南信州の庭[計画編]

広大な自然に囲まれた南信州の庭[計画編]
中央アルプスの麓、天竜川の先には南アルプスも望めるとても開放的な敷地に、地域材で組み上げた切妻屋根のシンプルな建物が建っています。
コンパクトで機能的な建物の周りにはとても広い庭、さらにその周りには広大な自然の風景。まさに、圧倒的な住環境です。
関東地方から南信州に移住されたご家族は、この地でのおおらかで自然とともに暮らす生活にすっかり慣れ、充実した日々を送っていました。
しかし、一方で、地方ならではの大きな庭の管理に悩んでいました。敷地面積はおよそ200坪、庭として作り込むにはあまりにも広い。庭に掛かるコストは途方もない金額になりそうです。
それでも、子どもたちが安心して遊ぶことが出来て、木々や草花が季節感を演出してくれるような、そんな庭を少しずつ作っていきたいと考えたご夫婦から、アトリエタムロに連絡を頂きました。

1.とにかく、いろいろな話をしましょう

メールでだいたいの様子は伺っていましたが、広い庭と周囲の圧倒的な景観は想像以上でした。未整備の庭は雑草が育ち、雑然とした印象というよりも、むしろ自然で景観の一部になっているように感じました。

施工前のアプローチ空間
施工前のアプローチ空間には、必要最低限の防草シートが敷かれています。
雑草に苦慮する庭
家が建つ前には牧草地や畑だった庭には、強靭な雑草が広がっています。

最初の打ち合わせは、庭に対する夢や田舎で暮らす理由、困っている点、お金の話など、多岐に渡りました。ご夫婦の人柄を感じ、ものすごく温かい気持ちになりながら、設計の作業を進めることが出来ました。

土間の玄関
玄関土間に置かれた薪ストーブが、家主の人柄や趣味を感じさせてくれます。

施工までに何度も打ち合わせを重ねましたが、本当にたくさんのお話しをしました。庭づくりでも、家づくりでも、対話こそが一番大切だと、いつも思っています。

2.庭の将来像を目に見える形で

アトリエタムロでは、当面予定のない範囲についても、おおまかなデザインを行い、全体的な庭の将来像を絵にするところからスタートします。予定が変更しても、実現しなくても問題ありません。将来のイメージをお客さんと私が共有し、そこに向かって出来ることを少しずつ実現していく事が大切だと思っています。

将来像を示すスケッチ
明確なエリア分けと、なだらかなで曲線的な線が特徴のスケッチ図面。

もちろん、今回の庭についても全体的なスケッチを書き起こしていきます。

大きな面積をどのように扱うか、駐車場をどこに配置するか、など何枚ものスケッチを重ねながら一枚の配置スケッチにたどり着きます。更にここから話し合いを重ねて、庭づくりの優先順位を決め、最初の工事に入っていきます。

3.庭づくりの優先順位

優先順位を付け、その中で限られたコストを見据えて第一期工事の内容を調整していきます。とても悩ましいところですが、ここは思い切って決断をする事が大切です。今回の場合、庭づくりの優先順位として

①敷地周囲に木フェンスを設置

②快適なアプローチ空間

③薪小屋とウッドデッキの設置

という三本柱を挙げて頂きました。このうち、ウッドデッキについては次期以降へ見送ったものの、これで庭の骨格を形成することが出来ます。

この先、5年後、10年後を想定しつつ、最初の第一歩を踏み出します。

 

道路との境界
駐車場への入口と前面道路は、植栽と低いフェンスでやわらかく仕切ります。

 

ポーチのイメージ
玄関土間へは将来的にウッドデッキからアクセスするようなデザイン。
施工開始の日
図面を元に地面にラインを引いて、重機による下地づくりから始めます。