ウッドデッキをつくる前に知っておいたほうが良い2つのポイント

ウッドデッキをつくる前に知っておいたほうが良い2つのポイント

室内と庭をつなぐ半戸外空間であるウッドデッキ。日々の生活を楽しいものに変えてくれるばかりでなく、布団を干したり作業をしたり、様々な可能性を秘めている魅力的な空間になります。

しかし、目的や使い勝手、素材や作り方などをあまり考えずに作ってしまうと、使い勝手の悪い庭になるばかりか、全く使われない無駄なスペースになることさえあるものです。

あまり難しく考えることはありませんが、次の4つのポイントを押さえ理想的なウッドデッキをつくりましょう。きっと愛着のある素敵な空間が生まれるはずです。

1. 使い勝手の良いウッドデッキをつくるために

ウッドデッキの使い勝手を大きく左右するポイントは大きく2つ。出来れば予定しているウッドデッキの形状を、実寸でその場所に描いてみるべきだと思います。ウッドデッキで重要なことは、まずは使い勝手の良さだと思います。

① 使いやすい奥行きと幅

ウッドデッキの奥行き、これは使い勝手を左右する一番のポイント。幅方向は建物との関係(開口部の位置等)である程度決まってきますが、奥行きについては使用目的や庭の広さなどを踏まえて、じっくり決めなければなりません。

例えば、昔の日本家屋に見られた濡れ縁。これは60cm程度の奥行きが標準だと思います。室内から庭に出る際に履物を履く場所だったり、腰掛けて庭を眺めたりする。こういった用途に限定されます。まさに必要最低限の奥行きです。

濡れ縁風のウッドデッキ
奥行き75cmの濡れ縁風ウッドデッキ

奥行きが100cmを超えてくると、ウッドデッキという印象が強くなっていきます。デッキの上に物干し竿を掛けて洗濯物を干したり、座布団と小さなチャブ台を出してお茶を飲む、なんていう使い方も可能になってきます。

奥行き1mのウッドデッキ
奥行きが1m程度のウッドデッキ

もちろん、奥行きが大きくなればなるほど用途も広がりますが、100〜180cm程度の奥行きがあれば必要十分であると私は考えます。設置コストやデッキ以外の庭空間の確保、将来のメンテナンス等を考慮して最善の大きさを検討するべきだと思います。

② 実は重要なデッキの高さ

ウッドデッキの高さとは、デッキ面の地面からの高さのこと。ウッドデッキの幅や奥行きについてはしっかり検討したものの、高さについては意外と考えられていない事が実は多いものです。

しかし、高さの設定を間違えると、とても使い勝手の悪いものになってしまいます。高さこそ、絶対に外せない重要ポイントなのです。その一番の理由は、施工後のやり直しが困難であること。もちろん、不可能という訳ではありませんが、高さを変えるためには基礎より上部を全て分解し作り直さなければなりません。これにはとても大きな出費と時間が必要です。あらかじめ検討しておけば、こんなことにはならないのですから、きちんと考えておきたいところです。参考までに、いくつかの高さのパターンを紹介したいと思います。

②-1 ベンチとして使いやすい高さ

地面から40cmくらいの高さに設定すると、庭作業の合間に腰掛けて一息ついたり、ベンチのような使い方をする場合に丁度良い高さになります。この場合、室内の床高さに比較的近くなる事が多いので、室内とウッドデッキの移動が楽になります。ただし、室内の床と全く同じ高さ(いわゆるバリアフリー化)にすると、開口部(アルミサッシ等)の敷居部分が一段低くなり、つまづく原因になったり、落ち葉等が溜まる要因にもなります。

さらに、地面からの高さが高いので、1段ないし2段の踏み段が必要です。

高さ40cmのウッドデッキ
高さ40cm程度のウッドデッキ

②-2 室内と庭を行き来する事が多い場合におすすめな高さ

地面より25〜30cm程度の高さに設定すると、室内からウッドデッキに出る際には10cm以上の段差が出来ますが、デッキから庭に下りる為の踏み段を省略することが出来ます。踏み段の有る無しはコスト的に大きく変わる部分ではありませんが、頻繁に室内と庭を行き来するような使い方をする場合、踏み段が無い方が使い勝手は上がります。また、庭自体の奥行きがタイトな場合に、踏み段を省略することが省スペース化につながります。

高さ30cmのデッキ
高さ30cmのウッドデッキ(デッキの上に手すり状ベンチ付き)

②-3 テラス的な使い方に最適な高さ

地面から20cm以内の高さに設定すると、ウッドデッキというよりはウッドテラスという名称の方がしっくり来そうです。ウッドデッキは室内の延長というイメージが強いものですが、テラスにすると庭の一部という印象が強くなります。そうは言っても具体的にどこが違うのか。例えば、室内の延長であるウッドデッキは裸足や室内履きで使う事が多く、逆にテラスになると、土足利用が前提になります。これはそのまま使い勝手や用途に直結する重要な要素になります。庭に出る機会が多く、屋外で食事を楽しんだり、友達を招いてガーデンパーティーを開きたい、なんていう場合は、ウッドテラス的な高さ設定が最適だと思います。

高さ20cmのウッドデッキ
高さ20cmのテラス状ウッドデッキ

ただし、この場合、デッキの下地にあたる基礎や束柱、根太といった部分に制約が出てきます。つまり、高さが低いために下地部分の高さを大きく出来ない事になります。よって、地面に土間コンクリートを施工し、その上部にデッキを置くような、そんなイメージになります。

②-4 異なる高さを混在させる

高さの設定で変わる用途と使い勝手について紹介しましたが、庭のスペースに余裕がある場合に限っては、高さの異なるウッドデッキを連結し、様々な用途に対応させるといった事も可能になります。用途ごとに高さを変えることで空間的に遊びが生まれ、使い勝手も向上します。また、庭の高さに変化がある場合(傾斜地等)にも、うまく対応が出来ます。ただし、高さの違うウッドデッキを設置する場合、全面フラットな場合に比べて設置費用が上がるケースがほとんどです。その理由は、設置する手間や材料が増える事によります。

異なる高さを組み合わせたウッドデッキ
異なる高さを組み合わせた階段状のウッドデッキ

2. 丈夫で長持ちするウッドデッキはこうしてつくる

せっかく作るウッドデッキ。丈夫で長持ちさせたいのは当然の事です。でも、別の業者が設置したウッドデッキの改修や撤去を依頼されて現場に伺うと、これでは丈夫で長持ちは出来ないな、というような状況に遭遇することがあります。全くメンテナンスをされていなくて完全に腐ってしまっている、なんていう場合はともかく、床面が水平でなくなっている、デッキを支える束柱が倒れている、というケースもあります。これらの原因は、ほとんどが下地の施工不良です。そうならない為に、丈夫で長持ちするウッドデッキを作るための重要ポイントを紹介します。

① 何よりも基礎が大事

建築物と比べて、ウッドデッキのような構造物の施工で最も軽視されがちな部分。それが、一番大切なはずの基礎の施工です。

ウッドデッキ自体が「地面に置かれるもの」という印象が強いためか、とりあえず地面に固定してあれば良いという誤った解釈をされる場合が多いのです。特にDIYで施工される場合、面倒であまり楽しくはない基礎の施工は、出来れば避けたい。というのが本音でしょうか。しかし、それでは丈夫で長持ちとは程遠いものになってしまいます。もちろん、建物の基礎のような必要以上に頑丈な基礎を作る必要はありませんが、次の点に配慮して安心出来る基礎を設置したいところです。

①-1 独立基礎や束石を使う場合

一般的なウッドデッキの基礎は、それぞれの束柱の下にコンクリート製の束石を埋めてある場合が多く、束柱と束石は金物で簡単に固定してる場合が多いです。

束石を設置する際には、あらかじめ束石の埋め込み深さよりも15cm程度深く掘り、ここに砕石を充填し十分に突き固める事が重要です。また、束石の下部と周囲にはコンクリートを流し込み、完全に固定します。

平板やコンクリート製基礎を使用
平板やコンクリート製束石を使用したウッドデッキ基礎

これは、ウッドデッキの自重や積載荷重によって、不同沈下を起こさないための対策です。ちなみに私が施工する場合は、コーナー部分や力が掛かりそうな箇所に束石よりも強固なコンクリート製の独立基礎を施工しています。

①-2 土間コンクリートがある場合

ウッドデッキを設置する部分に、もともと土間コンクリートが設置せれているケースもあると思いますが、この場合、束柱の設置にはいくつかのパターンがあります。

土間コンクリート上のウッドデッキ
土間コンクリート上に設置したウッドデッキ

・土間コンクリートの上に束石を固定する方法

・土間コンクリートに金物を埋め込む方法

・樹脂製や金属製の束柱を土間コンクリートに固定する方法

きちんと施工された土間コンクリートの場合、基礎部分の沈下というトラブルは少ないと思いますが、束柱との固定方法に注意が必要です。

② 下地の作り方で決まる耐久性

基礎の施工方法がウッドデッキの沈下に密接に関わるとすれば、基礎より上部の下地づくりによって、デッキそのものの耐久性や快適性が大きく変化します。

最も重要なのは束柱の間隔、大引や根太の間隔、各材料の断面寸法などです。

使用する材料や用途によって異なりますが、一般的な住宅のウッドデッキの場合、次のような寸法を使うことが多いです。

②-1 束柱の間隔(束石の間隔)

1m〜1.2m程度の間隔でも支障はありませんが、出来れば90cm間隔で作る事が良いと思います。90cmは建材の寸法の基礎になる寸法であり、大引や根太に使う材料を無駄なく使うためにも丁度よい寸法です。

②-2 大引や根太の間隔

大引は束柱に取り付く部材なので、束柱の間隔が90cmであれば、それと同じ間隔になります。

一方、根太は大引の上に載せ、床材を直接固定する部材になります。根太の間隔が広すぎると床板のたわみの原因になるので注意が必要です。床板の厚さによって違いますが、60cm以下の間隔に抑えるべきだと思います。

③ 寿命を左右する材料の決め方

ウッドデッキなので当然木材を使うのですが、木材にはあらゆる種類があり選定に悩むところです。また、天然木以外の人工木材(樹脂木材)なども数多く使われています。どれも一長一短があるのですが、ここではあくまで本物の木材をおすすめしたいと思います。

③-1 SPF材、ホワイトウッド

建築の2☓4工法に使われるSPF(スプルス、パイン、ファー)材や、主に内装材として使われるホワイトウッドは、ホームセンターでお馴染みの木材です。価格も安くて加工性も良いのですが、屋外に使うには耐久性に難がある材料になります。防腐処理や、こまめなメンテナンスが必要です。

③-2 WRC材(レッドシダー材)

ウッドデッキや屋外の木部に使用するには、とても使いやすい材料です。材料自体が防腐性や防虫性を備えており、防腐防虫塗装と併用することで長期間の耐久性を確保できます。また、価格と加工のしやすさも大きなメリットです。

レッドシダー材
防虫防腐塗装を施したレッドシダー材

③-3 ハードウッド(イペ、ウリン、セランガンバツ等、主に南洋原産の木材)

住宅のウッドデッキの他、公共空間のボードウォークなどにも使われる大変硬く重い木材です。ハードウッドと一口に言っても多くの種類があり、予算も色も様々です。大変密度の高い木材なので、切断や穴あけに少々苦労するかも知れません。金額は全般的に高めですが、基本的に無塗装で使用するため、塗装に掛かるコストは削減できます。

セランガンバツ材
施工後、5年以上経過したセランガンバツ材