アトリエタムロが考える庭づくり5つのポイント

初めてお会いするお客さまと打ち合わせをする際、いわゆる「雑談」がとても大事だと、いつも感じています。

「ここにこんな木を植えたい」「目隠しはこの高さで」「ウッドデッキには照明器具を設置したい」などなど、庭の打ち合わせなので当然様々なご要望を伺うわけですが。ちょっとその前に。

「どんな趣味を持っているか」「子供の頃はどんな事が好きだったか」「得意な料理はどんなのか」「この家で一番気に入っているところはどこか」

そんな、庭とは直接関係ないような事でも、いろいろとお聞かせ頂きたいと思っています。そんな雑談が、庭を作る上で大切な要素になっていきます。


1. 何よりも、主張し過ぎない

お庭のスタイルは、地域や文化によっても、趣味や好みによっても千差万別です。どの庭も同じで変化が無いよりも、様々なスタイルがあることは、とても素敵な事だと思います。一方、アトリエタムロには、大事にしていきたいスタイルや考え方があります。

一番大事なことは、主張し過ぎないこと。庭の一部にアクセントとなる目立つアイテムがあったり、大きなシンボルツリーがデーンと構えていたりする事を否定する訳ではありません。庭という空間そのものが、周囲の景観から大きく突出したり、きらびやかな意匠のお陰でチグハグな印象になってしまったり、という事があってはいけないと考えています。

木製門柱とアプローチ

木製門柱の枠に玄関へ続く大谷石のアプローチ

見方によっては、地味なデザインに映るのかも知れませんが、地味ながら堅実で、あたかもずっと以前からそこに存在していたかのようなデザインこそが、アトリエタムロの目指す庭づくりの骨格なのだと思っています。

2. 生活に馴染む空間になる

忙しい日々の生活の中で、庭に出てゆっくりした時間を楽しむといった余裕は、なかなか作り出せないものです。それでも、日常の生活の中で、ふと、庭を意識したり、ほんの少しの手入れをしてみたり、毎朝一度は庭に出てみたり。

決して無理をして庭を生活の一部にする必要はありませんが、ちょっとした瞬間に、庭を感じられるようなデザインを心掛けたいと考えています。

その為に、日常の動線の中に、庭や庭の一部が関わる事が大切だと思います。

デザインや構成、室内とのつながり方などによっては、庭は日常生活から全く離れた存在になり、庭そのものを忘れてしまったり、厄介な空間の代表になったりしてしまいます。造園に関わるものとして、これほど悲しいことはありません。

木製ベンチとテーブル

木製フェンスと同じレッドシダー材のベンチとテーブルで家族の時間を過ごします

アトリエタムロでは、庭の空間が生活の中に喜びや楽しさを与えられるようなものであって欲しいと願っています。

3. 経年劣化ではなく、経年変化の楽しみ方

素材選びは庭づくりの考え方やポリシーを端的に表す重要な事です。金額の大小やメンテナンス性ばかりに気を取られることなく、その庭に最もふさわしい、愛着が湧く素材を選択したいと思います。

一概には言えませんが、出来る限り天然の素材を使い、月日の経過とともに素材の良さが出てくるような使い方を心がけています。工業製品にはもちろんメリットがたくさんありますので、場合によってはそちらを選択する場合もあります。しかし石や木、植物などの天然素材が工業製品の影に隠れ、その存在価値が薄まってしまうような使い方は避けるべきだと思います。

御影石と植栽

玄関脇のちょっとしたスペースは、石と植栽でしっとりした空間に

例えば、アルミの下地に木目のプリントを貼り付けたもの、スチールのパイプに竹のようなカバーリングを施したもの、コンクリート製の擬木など、造園資材には天然素材を模して作られた製品が数多くあります。

こういった素材は、確かに本物よりも丈夫で、初めはきれいに見えるかも知れません。しかし、短期的にはきれいに見えても数年経つとお化粧が剥がれて、本来の素材が表面に現れます。これはポジティブな意味での経年変化ではなく、経年劣化に当てはまることです。

それよりも、天然の素材が少しずつ時間を掛けて色褪せ、風化し、雨に洗われながら、落ち着いた表情に変化していく事こそが、庭づくりの大切な要素になるものだと思っています。

自然石と那智黒砂利の水場

庭から掘り出した卵型の石と那智黒砂利で作った水場

4. 建築と庭の切っても切れない関係

住宅の庭の場合、限られた敷地の中で、庭と建物が密接に関係しています。多くの場合、庭と建物は別々に分けて考えられており、相互を一体的に同時進行で設計するなんていう事は、極少数派です。あくまで建物主体で、庭はそれに付随するもの、というスタンスなので仕方のない事です。

しかし、そうは言っても、庭と建物の関係性を無視することは出来ません。動線的な検討や窓の位置と庭の関係を検討することは当然ですが、建物の良さを引き出すのが庭であり、庭の良さを引き立てるのが建物だという考えに立ち、お互いがどのように影響し合うかを想像し形にするのがデザイナーの役割だと考えています。

建物と庭の関係

建物の意匠や雰囲気を引き立てる庭のイメージ

家を新築し、入居までの間にエクステリア店や外構業者が目隠しの為のブロック塀を積み、ポストや表札を設置し、門扉をはめて、アプローチの空間が完成します。これに、造園業者が木を数本植えれば庭の完成。建物との関係や周辺環境との調和なんて、検討する余地もありません。

出来れば、このアプローチの僅かなスペースについて、もう少しだけ時間を掛けて検討して頂きたいのです。お金を余計にかける必要はありません。ただ、キッチンの種類やユニットバスの壁の素材を選ぶ時と同じように、ほんの少し手間を掛けて欲しいと思っています。

御影石とサビ砂利のアプローチ

御影石とサビ砂利によるアプローチに様々な植栽を添える

5. 庭の香りをデザインすること

庭の香り。少し抽象的でしょうか。庭には土の香りや木の香り、花の香りなど様々な香りがあります。季節によって、その季節ごとの香りがあります。植栽を考える時にも、色や形、花や実の有無と同時に、香りについても大きな要素として検討しています。春には春の、夏には夏の香りがする庭。これは日本人が古くから当たり前のように行ってきた庭づくりの作法です。

キンモクセイ

キンモクセイや沈丁花に代表される日本の季節の香り

沈丁花やクチナシ、キンモクセイなど、あまりにも特徴的で分かりやすい香りもありますが、木々の間を抜けて部屋に入ってくる風の香りや、軒先に干したハーブの香りなど、様々な香りについて想像し、デザインしていくことも楽しいと思います。

ラベンダー

ラベンダーなどのハーブを軒先に干すと、ほのかな香りが室内に

ガーデンセラピー、って言葉がありますが、香りが人を元気づけたり、楽しい気持ちにさせてくれるという事は間違いありません。難しく考えることはありません。自分好みの香りを探してみるところから始めると良いのではないでしょうか。


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